京焼コラム連載にあたって/著者紹介

京焼コラム連載にあたって


一般財団法人 京都陶磁器協会
理事長 山中鍈一


この度、京都陶磁器協会では、京焼について皆様に更にご理解いただこうと、「伝統のはじまり・京焼の明治」と題して前﨑信也氏のコラムを掲載することにいたしました。
ご存じのように、京都には古くから宮廷を中心とした文化が根付き、人々の求めに応じて様々な焼き物が作られてまいりました。しかしながら、近世、明治から戦前にかけての 名作や、それらが生まれた背景を知る資料は少なく、ほとんど取り上げられずに今日まで きてしまいました。国内では知られることの少ない近世の京焼ですが、一方、明治の京焼 の多くが輸出を目的として作られていたため、海外では評価の高いものとなっています。
私たちが知らない、京焼の魅力やその価値を、海外で学業を修め、広い見地から研究している前﨑博士にひも解いていただきたい。そして昔の職人が持っていた気概を思い起こして、これからの若い世代に伝え、奮起する材料としてほしい。また、世界という見地か ら見た京焼の本当の価値を再発見していただきたいと私どもは考えております。焼き物を好きでいてくださる方々の参考として、また、焼き物に携わる人にはルーツを探り、未来へ進む手掛かりとして、このコラムがお役にたてば幸いに存じます。
伝統とは常に変わり続けることの積み重ねです。400年前、仁清は最新の技術をもった陶工であり、文化的にも技術的にも時代の最先端を行く作品を生み出していきました。また、明治の京焼も明治期には先端科学技術を駆使する工業でした。平成の今、この難しい時代を乗り越える、新しい才能の開花を京都陶磁器協会は後押ししていきたいと考えております。

 

著者紹介


前﨑信也(まえざき しんや)

京都女子大学准教授、立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員、京都市立芸術大学芸術資源研究センター非常勤研究員。
1976 年滋賀県生まれ。龍谷大学文学部史学科卒業、ロンドン大学 SOAS 修士課程(中国美 術史)終了、米国クラーク日本芸術研究所勤務、中国留学などを経て、2008 年ロンドン大 学 SOAS 博士課程(日本美術史)修了、2009 年に同大学より Ph.D.(美術史)取得。同年 より立命館大学で勤務し、2014 年4月より現職。

編著書に『松林靏之助 九州地方陶業見学記』(宮帯出版社、2013 年)。主要邦語論文に 「近代陶磁と特許制度」(『写しの力―創造と継承のマトリクス』思文閣出版、2013 年)、「明 治期における清国向け日本陶磁器(1)、(2)」(『デザイン理論』60 号、62 号)、「写真は真を 写したか」(『風俗絵画の文化学』思文閣出版、2009 年)等。主要英語論文に、“Late 19th Century Japanese Export Porcelain for the Chinese Market,” Transactions of Oriental Ceramic Society, London, vol. 73, 2010; “Meiji Ceramics for the Japanese Domestic Market: Sencha and Japanese Literati Taste,” Transactions of the Oriental Ceramic Society, London, vol. 74, 2011 など。