吉村尚子陶展「生きていくもの」

87(2018.03.18)

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「吉村尚子陶展『生きていくもの』」は201798()20()の期間中、京都陶磁器会館2Fギャラリーにて開催しておりました。手びねりでひとつひとつ端正に作り込まれた、彼女の作品には、命が吹き込まれているように思えます。
柔らかい雰囲気を持つ作者からは想像できないような、躍動感あふれる作品達に思わず圧倒され、それぞれの作品が、まるで本物の生き物のように性格の異なる愛らしい表情を持っており、見る者を魅了します。

 

3人々を惹きつける、力強い製作の要となっているのは彼女が象嵌(ぞうがん)という技法を用いている事にあります。象嵌とは胎土と異なる色土をはめ込んで装飾する技法です。素地土である胎土と違う色の土で模様を際立たせる装飾方法のひとつです。

 

象の目になぞらえて「象眼」、嵌めこみ模様という意味から「嵌花」(かんか:花=模様の意)とも呼ばれます。陶器作品の場合、胎土が生乾きの状態で象嵌を施し、土を削り取って凹んだ箇所に色の違う土を埋め込み、乾燥が進んだら色土をヘラなど工具で慣らして胎土に密着させ、余分な部分を削り取り完成となります。

 

2彼女は主に赤土を用いた象嵌の作品が多くあり、製作されている伊賀の土地を連想させます。また、伊賀の窯で焼成された作品たちには、穴窯等の自然燃料を使った窯の特徴でもある灰被りや、火(ひ)襷(だすき)といった技法も用いられ、独特の風合いを取り込んでいます。伊賀の女流作家、吉村尚子の今後にご注目ください。 京都陶磁器会館では、京焼の今後を担う若手作家から、伝統を引き継ぎ作り上げていく京の匠まで、様々な作家・窯元の作品を展示販売しております。京都五条坂にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

 

 

 

 

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