隠れた京焼 – ファインセラミックスの世界 –

2017.12.15 更新

hagaki

京都陶磁器協会は、作家・窯元・原料販売所等の有志の集まりによって構成される団体で、その中には電磁紡織器部という部会が存在しています。

 

この電磁紡織器とは、清水焼の関連産業として明治20年前後に、碍子製造より始まり、明治期末には水力発電開始事業の活発化に伴い、電気機器用の陶磁器を製造し始めました。
明治39年には松風嘉定が松風陶器合資会社を設立し、京都陶磁器試験場長 藤江永考、京都大学教授工学博士 小木虎次郎などの援助により、普通高圧碍子の研究に成功、
ついで特別高圧碍子を製造し始めました。

 

これにより、京都の電磁器製造は一躍名声を博し、海外輸出を行うまで成長しました。

この成功に刺激され、他産地でも一般の陶磁器製造から転業・兼業する者が現れましたが、京都は群を抜く高品質でした。

大正期に入り、第一次世界大戦による内需の拡大に伴い、電磁器の需要は大きく高まり、京都の陶磁器業界における影響力も大きくなっていきました。
第二次世界大戦下においては、京都陶磁器統制組合が設立され、原料や燃料、又、それらの運搬などの配給を行う組合にも、多くの電磁器製造業者が参加し、高級品が否定され多くの作家・窯元が苦しんでいた、京焼の暗黒期を支えてきました。

 

 弊協会は、旧統制組合の資産を母体とし、京都の陶磁器業界の普及進行のための事業を行う為、昭和28年に設立されたもので、その構成員として電磁器紡織器を製造する者が加入している、全国でも稀有な陶磁器関連団体です。

古くは明治期より、京焼と共にあった電磁紡織器ですが、現在は、「京都」や「京焼」とのイメージから離れてしまっています。
そこで、本展では京都より発信されている、隠れた京焼として紹介し、現代を生きる焼き物の知られざる姿をご覧いただければ幸いです。

 

市岡和憲 陶展 ~喫茶道具に出会う~

2017.10.15 更新

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市岡さんは極めて高いロクロ成形の技術で喫茶道具を制作されます。

その中でもとりわけ急須は、小さいパーツの接合やバランスなど難しい点が多い道具です。

市岡さんの急須を見ると、その精緻な仕事から、幕末の京焼三大名工といわれる青木木米の仕事を思い起こします。

磁器の極めて薄い急須を、ロクロで挽くことができる陶工は、今となっては稀有な存在です。

市岡さんは「家にあると、心が豊かになる」そんな作品を目指しながら毎日作陶されています。

本展では、今様喫茶道具を展覧いたします。皆様と喫茶道具のこころ豊かな出会いを願います。

 

 

〈 市岡和憲 陶歴 〉

 

1989 村田亀水に師事する

1996 独立 現在に至る

2007 技術参考作品(急須)を京都市が買い上げる

2010 第39回日本伝統工芸近畿展(急須)入選

             以降、第40・41・44回展入選

2012 第26回日本煎茶工芸展入選

2013 単室薪窯築窯

2015 第62回日本伝統工芸展(急須)入選

丹下裕史・郁 陶展 ~静かな叙情詩~

2017.10.15 更新

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 丹下夫妻の作品はどちらも静かなたたずまいの中に深い叙情性を感じます。

柔らかな肌合いの青白磁でシンプルな造形のオブジェを制作する、裕史さん。      

綿密な計算のもと、薄く成形された磁器が焼成途中で変形することによって生まれる造形は独特の存在感を孕みます。

 

淡い色彩をまとった器や可愛らしい造形を制作する郁さん。

葉を押し付けることによって施された独自の下絵が、釉薬の内側から豊かな色彩を醸し出します。

本展では、裕史さんのオブジェと、郁さんの器・干支や動物の置物などを展覧いたします。

 

暦の上では冬にさしかかる折、お二人の紡ぎだす「静かな叙事詩」に包まれてはいかがでしょうか。

 

〈 丹下 裕史 陶歴 〉

1991 京都市立芸術大学大学院美術研究科陶磁器修了

1987 朝日陶芸展 朝日陶芸奨励賞

1999 朝日現代クラフト展 奨励賞

          京都工芸美術作家協会展 協会奨励賞

2010 京都工芸美術作家協会展 協会奨励賞

 

〈 丹下 郁 陶歴 〉

1993  京都市立芸術大学大学院美術研究科陶磁器修了

1991  朝日陶芸展 朝日陶芸秀作賞(’93)

          朝日現代クラフト展(’94、’95、’96、’00) 

2007 京都美術工芸新鋭選抜展(審査員推奨作品 )

2016 伊丹国際クラフト展

堀尾泰彦陶展~鼈甲釉の奥ゆき~ 

2017.09.18 更新

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堀尾泰彦氏は豊かな表情の鉄釉、特に鼈甲釉が魅力的な作家である。

陶磁器の発展の歴史の裏には、しばしば「似せる」という錬金術的な意思があったと指摘されている。

例えば、青磁は玉の質感を目指したという説が強い。鼈甲釉もその類かもしれない。「似せる」行為は模倣のようで、実はとても創造的な行為である。

なぜなら、本物以上の魅力を与えなければ、その意味を成さないからである。

堀尾氏の鼈甲釉は、数ミリメートルの釉の厚みの中に深い奥ゆきを感じる。彼はこの数ミリメートルの宇宙に何を見出し、どこを目指すのか。

 

本展では、鼈甲釉を中心に油滴やその他の鉄釉を施した、茶道具や花器、水滴、食の器などを展覧いたします。

お気に入りの一品を見つけて頂ければ幸いです。

 

〈 堀尾泰彦 陶歴 〉

1959 京都東山五条に三代目堀尾竹荘の次男として生まれる

1982 京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻卒業 卒業制作大学買い上げ

1984 同大学大学院修了

 

   京都府工芸美術展・京展・中日国際陶芸展・陶芸ビエンナーレ・国際陶芸展美濃・京都工芸ビエンナーレに入選。

   京都・大阪・岡山・横浜・日本橋高島屋にて個展・二人展を開催。その他各地で個展グループ展多数。

   NHK岩ヶ谷陶芸教室 講師

 

森本真二陶展 ―酒器からうつわへ―

2017.08.25 更新

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昨年の森本真二の展覧会は酒器がメインの展示でした。炎を巧みに使って焼き上げられた器は、どれも深みのある遊び心にあふれた作品で、お酒をいただくのにピッタリの、渋くて粋なものでした。

人生を積み重ねて、その先にある楽しさや、もちろん大変さも含めた「豊かな気持ち」を代弁してくれるのが森本作品の魅力です。

そしてその中には、忘れてはいけない子供のような無邪気さがあちこちに見え隠れして、作品は一層輝いて見えます。

さて、今年はどんな器がやってくるのでしょうか?織部を再度、窯の火をくぐらせて赤く染め上げた赤織部。

そして油滴天目を追い求める中で生まれた、深い深い漆黒の黒天目。

森本さんのいたずらっ子のような眼がきらりと光ります。その瞳には、次の作品が見えているのでしょう。

 

作陶展の会期中は、全日、森本さんは会場で皆様をお待ちしておられます。作品もご本人も楽しみな展覧会です。

 

<宋永窯 森本真二 陶歴>

1963   京都に生まれる

1986   京都市工業試験場伝統産業研修専攻科修了

1987   京都府陶工職業訓練校成形科修了

1991   山梨県増穂にて登窯・穴窯焼成を担当 池田満寿夫氏らの焼成を担当

1992   京都市山科、清水焼団地において新工房を開く 国際陶磁器展 美濃’92初入選

1993    大阪阪神百貨店にて個展以後毎年全国の百貨店、画廊にて精力的に展覧会を開催 

1998   京都・山科の工房を亀岡・東別院の地へ移す

1999   リッツ・カールトン・ホテル大阪にて茶会と個展

2015  銀座松屋にて20回目の記念個展を開催

赤織部と天目、白磁を中心に現在に至る。

 

MUDDY真泥

2017.04.02 更新

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MUDDY真泥(までぃ)は 京都舞鶴にある陶磁器製造工房です。

オリジナルの土、釉薬を使用して 西洋式薪窯焼成による しっかりと焼き締った器をひとつひとつ手作りしています。

薪のいぶした香りが器にまとわり、どれを取ってもその質感は、五感に語りかけてきます。

 

オーガニックという一言では片づけられない素直で素朴な器たち。

 

そこには研鑚された作り手の丁寧な仕事が息づいています。どうぞごゆっくりご覧ください。

 

 

<服部克哉 Hattori Katsuya>    

1971年生まれ。静岡出身。

1994年  石川県立九谷焼技術研修所入所。修了後、石川県、熊本県の窯元に勤務。

2002年  佐賀県立有田窯業大学校絵付科修了。後、自主制作開始。

2009年  京都府舞鶴市へ転居。

 翌年夏、西洋式の薪窯を築窯。

陶器・磁器の制作。

灰釉・粉引・焼締等。

 

<村山朋子Murayama Tomoko>  

1979年生まれ。綾部市の白雲窯に育つ。

2003年  佐賀県立有田窯業大学校

ろくろ科修了

2004年  佐賀県立有田窯業大学校

絵付科修了

佐賀県立有田工業高校

夜間ろくろコースに1年通う。

有田の草山窯にて5年勤務。

染付、赤絵担当。

2009年  京都府舞鶴市に移住。

2010年  薪窯完成。

染めつけ 縹 淺野有希子 陶展

2017.04.02 更新

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染付の風合いを大切に「使いたくなる器」を目指す淺野さん。

彼女の屋号の「縹(はなだ)」とは薄く明るい青色の和名です。藍染めが主流になる以前、青色は露草の花弁で染められ、“縹色”と呼ばれていました。

派手さはないけど華やかで落ち着きがあり、主張しすぎないけど目を引く…。縹の“はな”は華やかさの“はな”と通じます。

 

淺野さんの染付は、伝統柄に縛られず、それをうまく活かして、独自の世界を作り出してあると思います。

清楚でありながら華のある風合い…淺野さんの想いが結晶となったうつわたち。生活に豊かな気持ちを添える存在として、手に取っていただけると嬉しいと思います。

 

 

 

<陶歴>

昭和57年   京都府向日市に生まれる

平成19年   京都伝統工芸専門学校(現:京都伝統工芸大学校)陶芸専攻科 卒業

        石川県加賀市 山本長左陶房にて山本長左氏に師事

平成24年   京都に戻り自宅にて独立。

       山本長左氏の教えでもある「食器は料理を盛ってこそ。盛り付けの邪魔にならないように」を守って、作陶に励む。

平成25年   高島屋京都店「京都コレクションショップ」

平成26年   屋号を「染めつけ 縹」とする パリ「Japan Expo 15 WABI-SABIパビリオン」

平成27年   伊勢丹新宿店「女流作家の細密美」 大丸京都店「京おんな三人展」

    ニューヨーク SANNGA「Artisan Reflections: Beyond Craft Technique」

平成28年   伊勢丹京都店「かわいい×縁起物」 高島屋大阪「手しごとMAN&WOMAN展」

橋本大輔・よし子二人展

2017.04.02 更新

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 煌めく宇宙のような天目の橋本大輔氏と、繊細で個性的な染付のよし子さん。おふたりの個性がぶつかり合う展覧会です。

大輔さんが天目の釉薬を志されたのは、京都市工業試験場 陶磁器コースの在籍中のことだそうです。

星の数ほどあるテストピースの中にひときわ魅力的なひとかけらの陶片が、今の大輔さんの出発点でした。

 

一方、佳子さんは学校で日本画を学ばれた後、友禅作家辻本雅俊氏に師事。

友禅を手掛けておられましたが、陶画に変更。とにかく描いていたい…と旺盛な制作意欲で独自の染付を展開されています。

 全然違う作品を、仲良く二人で制作されている橋本夫妻。是非、ご高覧ください。

 

 

 

<橋本大輔 陶歴>

昭和四十七年 京都五条に生まれる。

平成十四年   京都府立陶工高等技術専門校 陶磁器成形科終了

平成十六年  京都市工業試験場 陶磁器コース終了  二代目 橋本城岳に師事

平成二十五年 独立    第四十一回・第四十三回 日本伝統工芸展近畿展入選

<橋本よしこ陶歴>

昭和四十五年 京都五条に生まれる。

平成元年    京都市立銅駝美術工芸高校日本画科卒業 彩墨友禅 辻本雅俊氏に師事

平成十六年  二代目 橋本城岳に師事

平成二十五年 独立

「西山高原アトリエ村展」

2017.03.21 更新

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京都西山高原アトリエ村は京都市の西の端、西山の上に位置し、豊かな緑に包まれています。

1988年在住の芸術家が中心となり「西山高原アトリエ村展」を開催しました。

本年は30周年記念にあたり、陶芸家6人が記念展を開催いたします。是非ご高覧下さい。

<出品作家>

久保良裕、柴田恭久、柴田良三、伯耆正一、伯耆葉子、宮里絵美

 

荒賀文成・前田麻美 二人展

2017.02.15 更新

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石清水八幡宮を仰ぐ山の脇道を進むと、その山すそに工房はあります。

都会の喧騒を隔てた静寂の中、うつわ作家として毎日ろくろと向き合っておられます。

窯から焼きあがった器は、それが何年も前からそこにあったような雰囲気をかもし出し、設えに溶け込むのです。

 

荒賀さんのうつわは、ろくろで土と会話をしているように、のびやかで、命をはらんだようにふっくらと愛おしい形をしています。

柔らかい光をまとったような粉引きを中心に、温かい肌合いの焼しめ、黒釉も素敵です。

前田さんのうつわは、レースのように細やかな模様が女性らしい、落ち着いた華やかさをたたえています。

どれも使う人の心地よさを一番に思って作られたうつわです。

 

人々のくらしのために作られたおふたりのうつわを、ぜひお手に取ってご覧ください。