種田真紀

2018.02.18 更新

IMG_3532有田焼や丹波立杭焼、備前焼、京焼・清水焼など日本の伝統的な焼き物は各地に存在するが、最も細密な絵付けを施す技術を脈々と受け継いでいるのが九谷焼だろう。
使われる絵の具の種類も多種多彩で、鮮やかな色使いと緻密さから豪華絢爛という言葉がピタリとあてはまるような高度な技術をもって造られた作品が多い。
そんな細密な絵を施す作品を作られている種田真紀さんを今回は訪ねた。

種田さんは、今のように陶芸作家としての仕事をされる前は、全く違った世界で仕事をされていたそうだ。

「大学は法学部で学んでいましたが、卒業して物流関係の会社に就職して働いていました。具体的にはデパートの流通部で6年間勤めました。周りにいた先輩達からこの仕事は女性の離職率が高いから、あなたも何か別の道を探した方が良いと言われました。手に職を付けた方が良いと言わる時代でもありましたから、それならとデザイン関係の仕事を探し始めたんです。そんな時に、京都に旅行で来て烏丸通りにある京都伝統工芸館に入ったときに京都伝統工芸大学校という工芸を学べる学校があることを知り、そこで学ぶことに決めました。」

 

ちなみに、京都伝統工芸大学校というのは陶芸だけではなく、漆工芸や京手描友禅、木工芸、竹工芸、仏像彫刻など京都で受け継がれている、いくつもの伝統工芸を学ぶことができる民間が運営する第三セクターの学校で、アルファベットの略称でTASKとも称されている。(TASK:Traditional Art School Kyoto)
京都には陶芸が学べる公立の職業訓練施設として京都府立陶工高等技術専門校があり種田さんは、どちらで学ぶか迷われたそうだが、より全般的に陶芸を学べる京都伝統工芸大学校に決められたとのこと。
京都伝統工芸大学校を卒業された後、種田さんは九谷焼の産地、石川県で弟子入りされることになった。

「九谷焼の作家兼窯元の先生に就いて赤絵細描を習いました。私の先輩達は先生の所に来る注文の商品の絵付をしていましたが、私は先生から課題を与えてもらって自分の作品を描くという形で赤絵細描を習いました。2,3年経った頃から全て自分のデザインによる作品を造らせてもらえるようになりました。4年目くらいからは、赤絵細描の過去の名作である大皿などの模写という形で練習をしました。」

 

IMG_3572種田さんは九谷で5年間、赤絵細描の絵付けを修行され、今は、その赤絵細描の作家として活動されている。

「赤絵細描という絵付技法は筆の先端を使って髪の毛よりも細い繊細な線を描く技法で、線はミリ単位以下の間隔で描いていきます。正に細描という言葉通りの非常に細かい作業です。ですので、絵付の作業は非常に手間がかかります。例えば、抹茶碗のような、それほど大きくない作品でも一つ描き上げるのに2日はかかりますね。」

一つ一つに時間と労力を掛けて作られる作品は、とても見応えがある物で、線の一本一本がまるで定規でも使ったかのように、直線的かつ正確に描かれている。かなり高い技術を以てしてでないと描けないであろう素晴らしい出来映えだ。

 

 

IMG_3575赤絵細描の作品は、直線や曲線を縦横に組み合わせた模様である小紋が描かれているものが基本だが、作品としての広がりということから、種田さんは基本の小紋に絵をあしらった作品も作られている。 

「龍や鳳凰を描いて、周りを小紋で埋めていくデザインの作品もあります。こういうデザインは九谷焼の伝統的な作品に多いデザインでもあるのですが、そのままの形でデザインを持ってきても、やはり感覚的に古いので、周りの小紋の部分を今風に、私なりのデザインに仕上げています。」

作品を拝見させていただくと小紋が非常に細密に描かれているが、その小紋の配置などが、わりに自由な雰囲気で見ていて堅苦しさはほとんど感じない。むしろ、見ていて楽しくなるような作品だ。

「今は共同工房で作品造りをしていますが、まずは自身の工房を持ちたいですね。」
個展を中心に、これからも赤絵細描の作家として頑張っていかれるとのこと。作品は魅力的で人気が高い。個展を重ねられて素晴らしい作品をこれからも作り続けられるよう期待したい。

 

 

 

works

 

 


種田真紀

1978年 岐阜市生まれ
2001年 名城大学法学部法学科卒業
2008年 京都伝統工芸大学校卒業
      山本芳岳氏に師事
      主に上絵全般の技法を学ぶ
2011年 阪神百貨店にてグループ展
2012年 大阪三越伊勢丹にてグループ展
      石川県九谷焼資料館にて「赤の系譜展」出品
2013年 独立
      名古屋松阪屋にて「赤絵特集」出品
      石川県立伝統産業工芸館にて「久谷の赤と青」出品
      ルーブル美術館カルーゼル・デュ・ルーブルにて「世界伝統工芸品展」出品
      アートサロン山木にて二人展
2014年 銀座三越にて個展
2015年 京都高島屋にて個展
      アートサロン山木にて二人展
2016年 名古屋松坂屋にて「赤絵特集」出品
      岐阜高島屋にて個展
その他百貨店、ギャラリーにて企画展に参加
現在、京都市東山区の共同工房にて制作

種田真紀

共同工房(禎山陶苑内):京都市東山区今熊野南日吉町146-2
Mail:m.o.530510@gmail.com