藤田瑞古

2012.04.05 更新

伝統工芸士である藤田瑞古さんは、広島県の生まれ。陶器とは何ら関係のない家庭に生まれ、高校卒業時も進路は金融機関に就職が決まっていた。しかし、祖母から「これからの時代は手に職を付けた方がいい。」と言われ、親戚である京都では有数の規模を誇る大きな製陶所で一転、職人を目指すこととなった。

「26年間、私はサラリーマン職人やっとったんやわ。」と藤田さんは笑顔で話す。よく言われるのは、職人は10年やって一人前ということがあるが、藤田さんは26年間、ロクロ職人一筋で技術を磨き続けた。それは「一尺を超えるような大きな皿からお猪口のような小さなものまで、なんにでも対応できる技術を身につけてから独立しようと考えたから。」と藤田さんは説明する。

そんな藤田さんが仕事をされる工房は、コンパクトに作られた工房だが、非常に効率的に考えられた造りになっている。職人の間でつぶやかれる言葉に「仕事するより段取りせい。」という言葉がある。これは、手作業にかかる前に頭の中で、仕事の順序を事前によく考えてから作業にかかりなさいという意味で、職人の仕事とは、効率良く作業を進めてこそ価値があるという戒めである。藤田さんもコンパクトで効率的な自身の工房で「段取り8分、仕事2分」ということを常に念頭に置いて仕事をされているそうだ。

藤田さんが作られる焼き物は磁器を専門とされる。発注者の希望に添うように形やデザインに気を遣い作られている。「私の技術は問屋さんや小売店さんに鍛えられた技術」と藤田さんが語られるように、藤田さんの作品はとても繊細で美しい。限界まで薄く作られた磁体に華麗な染付や上絵付けが施されている割烹食器がメイン。

「京都は公家文化の土地、力仕事をしないお公家さん、しかも女性は重い器を好まなかった。だから、手の中に、はんなりと収まる軽くて薄い器を求めたのではないか。」というのが藤田さんの持論。職人時代、藤田さんは、共にロクロを回す同僚の職人たちと、競うように「俺の方が、もっと薄い品もん作ってやる」という心意気で技を磨いたそうだ。光にかざすと透けて見えるほどの薄い藤田さんの器は、鉋で、ぎりぎりまで薄く削られる。ただただ闇雲に削るのでは、器は崩れてしまうだけだ。ロクロ引きをした器の内側の形を頭の中で想像しながら外側のカーブを削り出していく。これこそ、藤田さんが26年間の職人経験の中で培った技なのである。

「今までの染め付けや上絵付けだけでなく、漆塗りなどの伝統技法も加え、これからの焼き物を作るということを考えてもいいのではないか。」と、藤田さんは先の展望を語られる。藤田さんの意欲的な仕事は、これからも続くのである。

藤田瑞古

1944年 広島県に生まれる
1962年 京泉窯入社
1984年 東京・椿山荘にて二人展
1988年 京泉窯退社後、瑞古として独立
1989年 京都陶磁器卸見本市<奨励賞>
1993年 現代の京焼・清水焼展パリ展出展
1994年 京都ホテル画廊にて四人展
1997年 京焼・清水焼展<入賞>
1999年 京都陶磁器卸見本市<入賞>
2000年 伝統工芸士の認定を受ける
2001年 京焼・清水焼展<審査委員長賞>
2002年 京都陶磁器卸見本市<知事賞>
2005年 高台寺塔頭、春光院伝統の技展出展
2007年 京都陶磁器卸見本市<市長賞>
2009年 伝統工芸品 功労者褒賞受賞

京焼・清水焼窯元
藤田陶苑
藤田瑞古

京都市山科区大宅古海道町28-17
TEL:075-593-5264