今回は、2018年8月17日(金)~29日(水)の期間中、京都陶磁器会館2階ギャラリーで開催しておりました。「北浦真保 陶展 ~生きとし生けるもの~」をご紹介させていただきます。
北浦さんは、京都精華大学に在籍されておられ、そこで学んだ技術・技法や表現を使い、これまでには、カタツムリなど生き物をモチーフに、生命感あふれる造形を制作しておりました。
本展覧会では、「信仰や民俗の中に生きているもの」をモチーフに、アジアの古美術に見られる陶芸のフォルムを研究しながら作り上げられた作品が並びました。手びねりという技法で、一つ一つ作り上げられていく作品たちは、空想上や信仰の生きものとしての姿形だけではなく、それぞれの持つ細かな動きや呼吸が伝わってくるようです。また、使われている釉薬にも特徴があり、北浦さんにしか出せない、作品の持つ雰囲気を作り上げる一助になっています。様々な金属・成分で作り上げられる釉薬は、表情豊かで生きものとしての動きある状態だけではなく、信仰・民俗に生きる祭具としての表情も持ち合わせています。
北浦さんの作品は、手びねり、押し型などの様々な成形方法を使用しますが、そのほとんどは、手びねりで制作され、生き物たちの一つ一つの動きや表情をうまく捉え、形にしていく様子は、圧巻です。
今回の展覧会に先立ち、京都陶磁器会館で行われている、実演に参加され、その制作方法を披露していました。その際に制作されていた作品も、今回の展覧会に登場し、造形の過程では見えてこなかった、色や雰囲気といった完成後にしか見えてこないものが見れました。
今回のテーマでもある、「信仰や民俗の中にいきているもの」として、狛犬や麒麟、象といったモチーフを使い、作品を生み出されました。様々な信仰や民俗・文化を通して生まれてきたものたちが、文様や象形としてテンプレート化されてきている中で、生き物として新たに切り出したときにどのような表情や動きを見せてくれるのか。それぞれの作品と対話しながら制作され、着色に至るまでのすべての工程で、生き物としての作品に寄り添い丁寧に制作されていました。
このように、土や作品との対話が必要になってくる場合には、手びねりという技法は最も相性がよく、制作しながらその方向性や趣を修正したり変化させてたりすることが可能で、動きを付けたり表情を変化させたりといった対応に幅が生まれるのが特徴です。今後、公募展や個展といった場で大きく活躍されるであろう、北浦さんにご注目ください。
一般財団法人京都陶磁器協会では、未来の京焼を担う若者たちを支援することを目的とし、展覧会場の貸出を行っております。
今後も、様々な方面で、未来に羽ばたく陶芸家・窯元をご紹介させていただきますので、京都・五条坂へお越しの際は、ぜひ、京都陶磁器会館へお立ち寄りください。