今回は、2016年10月14日(金)~26日(水)の期間中に開催しておりました「山下裕美子『きおくの輪郭』」をご紹介させていただきます。
山下さんの作品は、一見して陶磁器の作品ではなく、和紙で作られているのではないかと感じてしまう、そのような軽さと質感が特異な作品を制作されています。
かたちを作り出す際に、陶磁器の制作する上ではロクロや手びねりと言った技法を持って形作っていきますが、
山下さんは独自の技法として、和紙と泥漿(でいしょう・ドロドロに溶かした粘土のこと)を塗り重ね、張り子の様な作り方でかたちを作っていきます。
焼成時には和紙の部分だけが燃え尽きますので、生地の陶磁器が残り焼き上がるという制作方法を取られています。
この技法を使うことで、通常作品から感じられる「重量感」を取り払い、羽や紙のような軽量さを感じさせる作品となります。
その独特の雰囲気が、見る者の陶磁器に対する感覚や概念を揺らがせ、とっぷりと山下さんの世界観に引き込まれてしまいます。
また、極限まで薄くなった生地は、透光性を持ち、作者オリジナルの展示台によって柔らかく光を受けています。
その作品の持つ表情は、本当に陶磁器の作品であるか疑問に感じるほどで、様々な手法技法が存在する陶磁器の世界に新たな一面をもたらしてくれることでしょう。
オブジェ作品以外にも、鋳込み技法を使用した花器や食器類も制作されており、マット質の白磁の作品やそれに色味を足した作品のデザイン性や色使いは、
可愛らしく落ち着きのある作品となっております。作者である山下さんのたおやかさを形にしたような作品は、やはり、山下さんでしか表現できない作品となっております。
そんな山下さんの食器などの作品は京都陶磁器会館にて展示しております。ぜひご覧ください。
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