今回は、9月15日から30日まで開催した、黒川徹さんによる展覧会と、ワークショップが終了しましたので、特集記事としてご紹介させていただきます。
黒川徹さんは、筑波大学の彫刻専攻を卒業後、京都市立芸大で陶芸の技術を学び、現在は京都府亀岡市の工房で作陶活動をされています。今回の展覧会では、黒川さんが滋賀陶芸の森でゲストアーティストとして滞在中に制作された作品を中心に展示し、会場が自然な温もりのある、それでいて凛とした空気に包まれていました。会場に来られたお客様も、その空気と、自然の力学をもとに制作された黒川さんの作品に魅了されていました。
そして、より多くの人に現代の若手陶芸作家による作品が完成するまでの工程、制作方法、作品に対する思いを知ってもらおうと、展覧会期間中の9月29日の午後2時より、ワークショップ「オーガニック・プロセス 自由な土の建築法」を黒川さんのご厚意で開催いたしました。
参加者は、陶芸を志す学生や職人・作家から一般の方まで計20名ご参加くださいました。黒川さんが土を使ってかたちを作っていく方法(手びねり)を実演しながら解説していただきました。
黒川さんの制作方法は、モチーフを必要とせず、スケッチもしない、自然のかたち、自然の力学をもとに、パターン(幾何学模様・ハニカム構造等)を決め、そのパターンに構造(ネガティブ・ポジティブ)を加え、さらに全体の構造(ひらく・とじる・ひずみ・ずれ)で重力をコントロールしながら制作していきます。「はじめのパターンにさらにパターンの組み合わせることで無数の形を生み出すことが可能なので、作るたびに新しい発見があります。」と、実演制作をしながら黒川さんは仰っていました。
次に、黒川さんの作陶に大きな影響を与えた絵本(レオ・レオニの「ペツェッティーノ」じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし)について話して頂きました。じぶんは誰かの一部と思って旅をするペツェッティーノが、あるきっかけでじぶんもみんなと同じように個々の集合で出来ていることを知って、じぶんは誰かの一部ではなく、自分自身なのだと気づく事ができるお話です。
「この話を自分の制作に当てはめたとき、芸術だけではなく、他のいろんな分野にふれる事で、制作の過程で自分は何を作ろうとしているのか、知ろうとしているかが、なんとなく分かるんです。」と、黒川さんは語ってくれました。
ワークショップが終了した後も、制作方法や土、焼成について、質問をするお客さんが絶えず黒川さんも快く質問に答えて下さいました。ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。「このような企画があればまた参加したいです。」との声も多数ありましたので、これからも京都陶磁器会館でワークショップなどの企画を開催していけたらと思っています。
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