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伊藤竜也 陶展
伊藤竜也 陶展 「極光」
「極光」は、伊藤竜也が作り出した釉薬の名前でもあります。
彼は始め、国宝の窯変天目に憧れ、かの作品に迫ろうと研究を重ねていました。しかしある日、友人から「既に存在するものを追随するのではなく、自分自身の作品を作り出すのが本筋ではないのか」と問いかけられました。彼は自問自答の末、それはそうだ、自分にしかできないものを作ろう…と決意、その答えが工夫を重ねて編み出した釉薬「極光」だったのです。
「極光」は釉調の変化を持たせるために、基礎になる釉薬の上に二重に釉薬を施してあります。釉薬の厚みが厚すぎると剥がれてしまうので、慎重に施釉しなければならなりません。また、焼成方法にも工夫が重ねられており、何度も何度も火の試練に耐えたのち、「極光」は完成します。
そうして完成した作品は、色も輝きも非常にデリケートで、写真ではなかなか本当の美しさは伝わりません。微妙な色合いを出すために、撮影を担当してくださった写真家の二村先生も、セッティングだけで2時間を費やされたほどです。北極のオーロラが映像に移りにくいのと同じで、伊藤竜也氏の「極光」も実際に手に取っていただかないと、あの美しさはわかってはいただけないように思います。
彼の作品を初めて目にしたのは、昨年開催された「日吉開窯100周年記念コンペディション」の時でした。この展覧会は次世代を担う若手を発掘しようと企画された展覧会でしたが、その会場でひときわ美しく輝く上品な小鉢が伊藤竜也氏の作品でした。深い紺青色の高杯の小鉢。やはり、どの人もそう思われたのか、人気投票の結果、グランプリ作品となりすぐに売れてしまいました。よほど手慣れた作者の作品かと思っていたら、背の高い男の子が恥ずかしそうにやってきて、初めてのコンペで、作品を人前に出すのもあまり経験がないと話してくれました。京都陶磁器会館ではすぐに追作を依頼し、今日まで彼の作品をお預かりしています。
伊藤竜也氏の作品は、最近、格段に洗練されてきました。今年の「京焼・清水焼展」でも、京都市長賞を獲得、そして今回、初めての個展を弊館のギャラリーで開催できることは、京都陶磁器会館としても大きな喜びです。是非、一人でもたくさんの方に、会場で火によって永遠に刻まれた伊藤竜也の「極光」をご高覧いただきたいと願っております。
陶 歴
1988年 京都に生まれる
2009年 京都府立陶工高等技術専門校 成形科修了
2010年 京都府立陶工高等技術専門校 研究科修了
2014年 日吉開窯100周年記念コンペティション
一般投票で選ぶグランプリ 受賞
2015年 京焼・清水焼展 京都市長賞受賞
紫峰窯 伊藤 竜也
京都陶磁器会館ホームページでは、「クローズアップ陶人」として伊藤竜也氏の特集を掲載しております。是非、ご覧ください。