林林山

2018.07.25 更新

IMGP0851 自然豊かな山間の地、京都は宇治の炭山で作陶を続けられる林淳司さんは、色とりどりの釉薬を施した器の作品を得意とされる。
 特に、金属発色剤のチタンによる乳濁系統の釉薬を多く扱われている。全ての釉薬は林さんご本人が調合されたものだ。
 
「釉薬のほとんどは父親から受け継いだものですが、私自身でも新たに釉薬を調合することもあります。ただ、釉薬の多くは父親の代からのものですから古い調合なのですが、原材料が昔のものと質が変化していたり、なくなっていたりするものもあり、そういうものは今の原料で代用するしかありません。」
 
 陶磁器の原料は自然界から採掘されるもので、枯渇してなくなったり、掘る場所によって質が変化したりするのは避けられないのが事実である。陶磁器を作る上で誰もが苦労する点だ。

 

 

IMGP0885 林さんは窯元の家に生まれ、子供の頃から父親の後を継いで焼きものの仕事に就こうと考えておられた。

「小学校の低学年までは、動物園の飼育係になりたいと書いていたのが記憶に残っていますが、6年生になった頃には陶器屋と書いていましたね。当時はまだ年に二回ほど登り窯を焚いたりしていましたので、窯を焚く手伝いに興味を持って行ったりしていました。後に、京都精華大学の陶芸科に進んで、自然と父親の後を継いで窯元になったというわけです。
轆轤の技術を学ぶために京都府立陶工高等技術専門校に行くということはしていません。京都精華大学の陶芸科を卒業してすぐに父親の下に入って釉薬のことや焼きものの仕事全般を父親から学び、当時おられた轆轤の職人さんに教えてもらって、轆轤を学びました。」

 林さんの釉薬を施した作品は色とりどりで、発色が実に美しい。特にピンク色に発色しているものや淡青色に発色しているものは色に深みを感じて、なかなかに味わいがある。

「普段は問屋さんからの注文をこなす仕事に追われているような感じですね。主に一般食器を作っています。抹茶碗も作りますが価格的に安価に提供していますから、お稽古茶碗として問屋さんから多くの注文をいただきます。」

 

 

 林さんは数をこなす仕事として普段は問屋さんの注文を受けて、施釉のみの焼きものを作られているが、作品として模様を施したものを作られることもある。

「オセアニアの工芸品やアートが好きで、それから引用した模様を施した作品をよく作ります。オーストラリア先住民のアートですね。」

 作品を見せていただくと幾何学的な模様の作品で、いわゆるアボリジナルアートをオマージュしたとでも言える作品になっている。
 オーストラリアの先住民は、読み書きするための文字を持っていなかったそうで、コミュニケーションを取るために絵を描いてあらゆることを伝えていたとのこと。単純な線や点、丸を書いて情報を伝達したのだそうだ。
 このアボリジナルアートはドットペインティング、つまり点描画で描いた模様が多くあり、点が集まる形で様々な描画を行っている。

 

 

IMGP0948「オーストラリアの先住民は、これらの模様を描くことで、これを魔除けにしていたようです。」

 先住民によって描かれたドットペインティングは、自然を崇拝した彼らが精霊たちによって創造された創世神話の時代のイメージや彼らが伝承する祖先からの大事な教えや考え方を絵という形にして残したもので、これらのアボリジナルアートによる表現はドリーミングとも言われる。ただ、この場合のドリーミングと呼ばれる言葉は単純に訳しただけの「夢」というものではなく、先住民の頭の中のイメージにあるスピリチュアルな概念のことを指す。
 林さんの、このアボリジナルアートからインスパイアーされた作品は実に模様が見ていて楽しくおもしろい。特に、和食器にこれらの模様が施されているのがおもしろくて楽しいのである。和とオセアニアのコラボレーションだ。

 

 

IMGP0972 元の先住民によるアボリジナルアートは点描画であるが、林さんの作品に描かれた模様は陶磁器の技法である“掻き落とし技法”が使われている。この掻き落とし技法というのは、器本体の土とは異なる色に焼き上がる化粧土を表面に施し、線状や面状に化粧土を引っ掻いて取り除くことで、器の表面に残った化粧土が模様になるという描画技法である。
模様になっている化粧土の部分には、発色が鮮やかな低火度の色薬を塗って焼かれている作品もあり、見た目にも綺麗だ。林さんは、これらの作品による展示会も開催されている。

「私は絵が得意な方ではないので、模様を描くことや釉薬によって出す色合いで良い作品を作りたいと、いつも心がけながら仕事をしています。視覚で楽しみ、触感で温かさを感じるような器造りを目指しています。」

 林さんの、これからの作品にも注目していきたい。

 

 

works

 

林淳司

1970年 京都市生まれ
1992年 京都精華大学 陶芸科卒業
1995年 同大学助手 終了
1996年 宇治市炭山にて作陶開始

京焼・清水焼 炭山清谷窯 林山陶苑
林淳司

江戸後期初代八兵衛は久谷で名をはせたが
明治二十二年曾祖父定次郎が京都にて陶技を磨き
林山と号し以来五条坂にて作陶
祖父辰二郎の継承経た後
父八郎が昭和四十六年炭山に窯を移して今までの釉薬に
新しい技法で窯変もの釉薬を研究
平成十五年継承
絵付け 掻きおとし等 視覚で楽しみ触感で温かみを
感じる器造りを目指しております。

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