京都府と奈良県の県境に接する自然豊かな木津川市鹿背山で作陶される福田翔さんの工房は、あらゆる題材をモチーフにした絵が描かれた焼き物であふれている。福田さんは、ご自身のことを“絵付け職人”と自ら称されるが、与えられた既存の模様を施すだけの絵付け職人の域に留まらない、オリジナリティーに富んだ絵付けをされた焼き物がずらりと並ぶ。
福田さんは島根県のご出身。学生の頃、将来どのような職業に就くかを考えたとき「一人でできる仕事をしたい」との強い思いを持ち、陶磁器を作る仕事を選ばれたそうだ。
ふるさとの島根県を離れ、京焼の作家、手塚充氏の下、修業を積まれることになった。その後、同じ京焼の窯元、瑞昭窯で絵付け職人として従事されていた時期、福田さんに大きな影響を与える人物と出会うこととなる。
福田さんに、多大なる影響を与えたその人物とは、村田幸之介という絵付け師で、独自の水墨画法を持ち、たたみ一畳ほどもある大きな陶板に、瞬く間に風景画を描いてしまうほどの名人であったらしい。福田さんは、この村田幸之介氏から水墨画法を吸収し、それを自らのものとして焼き物に施す技法を身につける。独立する際には、単色の濃淡だけで表現する南画風の絵付けに加え、色絵も取り入れたオリジナルの画風を完成させた。福田さんは、この画法をご自身で「墨彩画」と称されている。
“一人でやる仕事”というのが福田さんのポリシー。絵付けだけでなく、ロクロ挽きやタタラ技法などによる成形も行い、全くの土から陶器としての完成まで福田さんの手による、正にすべてがオリジナルだ。
福田さんの絵の題材となるものは、ありとあらゆるもの。工房のすぐ脇に咲く花や野草、近くの木に停まる小鳥、町に出たときにスケッチした大阪中之島の風景、勇壮な龍、それこそ福田さんの絵の題材は事欠かない。そして、焼き物の素地は福田さんにとってカンバスなのである。
様々な絵付けの焼き物に囲まれた福田さんの工房にいると、いつしか、心なごやかに癒されるような気持ちにさえなる。日常の食卓を福田さんの焼き物で満たせば、食事がより楽しいものになるに違いない。良いものを見ることは目の肥やし。良い陶器を見極める目を持てるようにも心がけたいものだ。
福田翔
1951年 | 島根県平田市(現、出雲市)生まれ |
1971年 | 京焼作家手塚充氏に師事し、茶道具、花器等広く陶を学ぶ |
1975年 | 六斉陶房にて陶画を学ぶ傍ら、水墨画家村田幸之介氏(日本南画院理事)より墨絵を取得する |
1984年 | 木津川市鹿背山にて「楽土窯」を開窯する 京都日本画家協会会員、元日本南画院院友 日本南画院展奨励賞、特選、会長賞受賞 |
1987年 | 滋賀県立信楽窯業試験場非常勤講師となる |
1990年 | 信楽各窯業所三年間巡回デザイン指導 |
1997年 | 四日市窯業試験場デザイン指導 |
1998年 | 瀬戸市窯業試験場デザイン指導 京都、奈良、大阪にて個展 |
楽土窯
福田翔
京都府木津川市鹿背山西大平45
TEL:0774-72-3619
e-mail:rakudogama@dance.ocn.ne.jp
楽土窯のホームページ