「五十歳を過ぎてから手が震えるようになってねぇ・・・、ガハハ」と北川さんは笑っておられたが、いや、そうではない。茶碗の側面に変化を付けて味を出すため、意図的に手を震わせて起伏を付けておられたのだ。筆者もろくろを回して器を作るし、今までに何人もの同業のろくろ師の作業を見てきたが、北川さんのような技は見たことがない。普通なら熟練の職人でも、ろくろで回転する土に対して触れている手を、あのように震わせたら当然の如く、器はグチャグチャになって潰れてしまう。それを、いとも簡単にこなしてしまう北川さんの技は、容易には真似のできない面白い技だ。
北川さんは個展だけでなく、日本各地で行われている焼き物市にも積極的に出展される。直に、器を買いに来られる人と触れ合って作品を提供することに意気を感じておられるのだ。第一回目として今年から開催される「やきものフェアinみやぎ」にも出展されるそうだ。今まで出展したことがない焼き物市にも、あえて赴かれるのは、東日本大震災の被災地である宮城で初めて開催される焼き物市だからこそ、応援する意味でも参加したいのだとのこと。やはり、ここでも、心優しき陶芸家の北川さんなのである。
北川宏幸
1955年 | 京都府に生まれる |
1977年 | 京都造形芸術学院陶芸科卒業 在学中に木村盛康氏に弟子入り 以後四年間 京都クラフト展入選 以後三回 |
1978年 | 京都府陶工訓練校成形科卒業 |
1987年 | 京都府綴喜郡にて弥三郎窯を開窯 |
1988年 | 朝日現代クラフト展入選 新匠工芸会展入選 |
1991年 | 朝日現代クラフト展入選 |
1992年 | サントリー美術館大賞’92 -挑むかたち- 入選 札幌芸術の森クラフト展入選 朝日陶芸展入選 |
1994年 | 京展入選 |
1995年 | 新美工芸会展奨励賞 |
1996年 | 日清めん鉢大賞展入選 |
1997年 | 新美工芸会展シンポ工業賞 |
2017年 | 2月 62歳没 |
その他 東武百貨店池袋店アートサロンにて平成七年より毎年個展を開催 京都・大阪・東京にて個展 |